なにが面白いのか?

自然農法を始めると、これまでの一般的な農業とまるで正反対の考え方であることに気づきます。ある日突然、自分がまったく違う世界に来てしまったという感覚を味わう人もいます。

種を播けば実るという事実に接したとき

農業や園芸に興味を持つと、例外なく「肥料」の話になります。ですから、農作物や花を育てるには「肥料が必要だ」とほぼすべての人が信じて疑いもしないでしょう。畑やプランターは、いわゆる”箱庭”であり、あなた自身が、あなたの意思で管理・運営する“自分だけの空間”です。

もし野菜や果物あるいは花がうまく育てば、「自分の腕前は大したもの」と喜ぶでしょうし、うまく育たない場合は、「まだ自分の技術が未熟なのだ」とがっかりするかもしれません。

一方、自然農法の畑やプランターで農作物や花がうまく育つと、まず初めに「本当にできるのだ」という驚きの感情がわいてくるでしょう。そして、できた野菜や果物を実際に食べてみると、これまで味わったことのない透明感のある美味しさに感動するはずです。

それから何度か栽培を続けるうちに、いつの間にか「農作物や花は、種を播けば育つ」ことが「当たり前のこと」として自分の無意識のなかに根付いてくるでしょう。そして、本当の心の変化は、そのあとに訪れます。

それまで、「自分にも、無肥料で野菜を育てることができた」という達成感のような意識だったものが、ある日突然、そうではないことに気づくのです。野菜や花が育つのは、私たち(人間)がそうしたのではなく、そもそも自然に育つ生き物である、という事実です。その瞬間、「私たち人間は自然の一部であり、地球に住むすべての生き物とつながっている。すべての生き物は、美しく青い地球と一体である」という不思議な感覚を得ることになります。

このことは、自然農法を実践している人に共通する感覚といえるでしょう。

現代社会では、人間は神のごとき万能な力と知恵を持ち、自然を制しているかのようにふるまっています。その延長で、「人間の持つ知恵と技術によって、農作物を意図的に作っている」と考えているわけですが、自然農法はその考え方と真逆であることに気づくことになるのです。

私たち人間は、農作物が育つように、ただ環境を整えるだけです。あとは、農作物が育つ自然の仕組みに任せるのです。このとき、私たちは、目には見えなくとも土の中の微生物や小動物の存在を感じ取り、さまざまな作物の声が聞こえるようになるでしょう。花から花へと飛び回るチョウやハチ、トカゲやカエルや野ウサギの姿も見かけるようになるでしょう。ありとあらゆる生き物が、自分を包み込んでいることに気づき、守られている安心感に包まれるでしょう。

現代社会になんらかの息苦しさやストレスを感じていた生活が一変します。自然農法を実践すると、地球をまるごと感じるセンサーが働き始めます。

写真は、自家採種したトウモロコシの種。命のエネルギーが凝縮されています。

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