脱“無農薬表示” 宣言
肥料を一切使わずに……
農業技術研究所歩屋は創業18年目になります。農薬はもとより、肥料類も一切使わない栽培技術を求めてひた走ってきました。2015年には、完全な無肥料栽培の技術がある程度確立し、日本で初めての農業理論特許が認められました。お蔭さまで、いまや「自然農法」というジャンルを抜け出し、農作物だけでなく、あらゆる生命を増やしていく技術として「創命農法」を提唱するまでになりました。
食料危機への対応
さて、世界はいま過去に例がないほど危機的な状況にあると言われています。ひとつは気候変動による食料生産の落ち込み、もうひとつは世界的な景気後退です。ほかにも環境破壊や太陽活動の変化など、日常生活では気付きにくい、地球規模の危機です。
こうした状況の中、私たち人類にとってもっとも重要なことは何でしょう。私は「食料の確保」だと考えてきました。いまの農業技術は天然資源を原料にした「肥料」にほぼ100%頼っています。しかし、天然資源は遠からず枯渇します。つまり、「肥料を使わない技術」がなければ、多くが餓死する未来が訪れる可能性が非常に高いのです。
いま、近年の食料不足に対する懸念から、自給自足を目指す人が確実に増えているように感じます。あるいは、学校へのオーガニック給食導入を訴える動きなど、安心安全な食を求める人も確実に増えています。そこで気になることがひとつあります。それは「無農薬」を求める風潮です。
「無農薬」を求める声への違和感
どういうことかと言いますと、この半世紀ほど、農薬の危険性を訴える声があり、それが徐々に大きくなってきました。確かに農薬を大量に使うことで、消費者にも、生産者自身にも健康被害が及ぶことは間違いありません。そこで、農薬を使わない「オーガニック」あるいは「有機」という考え方が注目されています。農薬を使わないという表現のなかに「無農薬」や「農薬不使用」という言葉が使われています。しかし、世間では「無農薬」「農薬不使用」であれば何でも良い、という意識の消費者がとても多く、問題の本質がかき消されているのです。
健康な状態のときに薬を服用する人はいるでしょうか? 植物も同じです。健康な植物には農薬など必要ありません。実際、化学肥料が登場した当初、農薬など存在しなかったのです。そして、化学肥料の使用を続けてきたことで、不健康な作物が増えて、薬物の使用が必須になってしまったのです。肥料という面では、化学肥料はもちろん、有機肥料も同様です。
健康な野菜に「薬物」はそもそもいらない
逆に健康な作物であれば、農薬を使う必要などありません。私たちは完全な無肥料栽培の技術を追求してきましたから、野菜は自然のエネルギーを得て健康に育ち、もちろん農薬など一度も使ったことがありません。大事なことは、「農薬」ではなく「肥料」のほうなのです。これまで、私自身が「農薬」を嫌う消費者に忖度して、「無肥料・無農薬」という表示を使ってきましたが、これからは「無肥料」のみを表示していこうと考えています。なぜなら、健康な野菜に農薬を使わないことは当たり前のことで、そのことを消費者自身が知るべきだと考えているからです。
「無肥料栽培」は、「無農薬」が大前提です。私たちは「完全な無肥料」の野菜作りに取り組んでいます。
2024年10月